ロンドン・マークス&スペンサー店員の日記

純生のイギリス人を語ります。

スーパー店員は見た・その1

実はそろそろ、またしてもロンドンのスーパーマーケット界を去る事になりました。去ると言っても、これで6度のおいとまですから、またいつ舞い戻る巡り合わせになることやら、と思いつつ。今回は特に、しばらくイギリスを離れてスペインで暮らす算段になっている為、僕が愛するイギリスの、普通の人々を後にしなければならない、というのがまた格別な思いにさせてくれます。

皮肉屋で、いつも物事を斜めから見て、ブラックジョーク満載のお下劣なイギリス人。そんな人々に敬意を表して(?)「家政婦は見た」よろしく、「スーパー店員は見た」シリーズをお届けしようと思います。

えっと、あれは去年の冬、Sainsbury’sで働いた時の事だったと思います。ある夜、カリビアン系のごく普通のオッサンに呼び止められ、尋ねられました。「エビ天ぷらは今日はどうしたんだい」。切羽詰まった顔色です。「申し訳ございません、本日は売れ切れてしまいまして。。。」と答えたところ、「えーーー?!今日は絶対エビ天が食いたかったんだよーーー!」。

その嘆きようが尋常でなかったので、僕としては激しい苦情の嵐がそれに続くのでは、と身構えしました。が、そのオッサン、「今日はついてないなぁ・・・」と悲しい顔するのみ。僕はその姿が愛おしく感じられてしまって、ついニッコリしてしちゃったのです。

しかし、そのニッコリの意味が向こうに通じる筈はありません。だって、僕が日本人で、だからこそ、この国の一般スーパーでエビ天の総菜が売られていて、それが売れ切れになる程人気な上に、こんなコテコテにカリビアンなオッサンがここまで嘆くその姿、それが微笑ましさを極める光景だと感嘆している、なんて分からないでしょう。オッサンは僕に怪訝な目線を投げかけながら、トボトボと店を後になさいました。

さて、これは何ともLondonを象徴するような、そしてなぜ僕がLondonを愛して止まないのか、という、まさにそれを体現する出来事でした。

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Sainsbury'sの小型コンビニ店舗

 ヨーロッパ大陸側のスーパーの品揃えの貧しさ、本当に悲しくなります。君たちには好奇心も冒険心もないのか!と。パリでマークス&スペンサーが人気なのもうなずけます。小型のコンビニ型店舗でさえ醤油や豆腐が買えますから、ここロンドンでは。大型店舗では更に充実の品揃えです。スペインでもSainsbury’sとM&Sが恋しい日々になる事でしょう、きっと。イギリスのスーパーに幸あれ!