ロンドン・マークス&スペンサー店員の日記

純生のイギリス人を語ります。

イギリスの自信

つい先日、スペイン、バルセロナを訪れる機会がありました。尤も、生粋のカタルーニャ人であればバルセロナはスペインではないのですが、その話はまた別の機会に。
さて、今回バルセロナで感じた事というよりは、かつての友人達、そしてロンドンで知り合ったスペインの人々から総合的に感じ取った事として、常々思っていた事があるので、今回はそれについて少々。これはイギリスとの対比、引いては日本の事へと、僕の中ではこじつけられてしまうのですが。

まず、僕が思うスペインの人々の傾向として、ほんのちょっぴりでも自国の批判をされたと思うと、過激に反応し、熱のこもった弁護を始めるところがあるようです。こちらは批判した訳ではなかったのに、妙なところに反応されてしまい、困った事が何度もあります。例えば、スペインで仕事探しに苦労していた時に、「コネがないからねー」と、それはどの国でもそういうものだというつもりで言ったのに、聞き手はそれを、スペイン社会が非近代的だと批判された気になったらしく、スペインでもコネなんて関係なしに純粋に実力勝負だよ、との反応が。。。

更に、イギリスで知り合ったスペイン人達の特徴として良く出くわすのは、やたらとイギリスやロンドンの悪口を言う、という点。ケチをつけたがるのです、何かにつけ。これは、フランス人、ドイツ人、イタリア人にはあまり見られない傾向で、何故だろうと長く思っていました。マドリッドに住む友人がロンドンに来た時に案内して歩いた時も正にその通りで、とにかく、ロンドンのあら探しをするので閉口しました。その友人はスペインの全国紙で旅行記事を書くジャーナリストなのに、です。しかも、腹の底では「ロンドンはすごいな」と思っているのが見え見えで。。。

もう一つ、不思議な現象は、ロンドンで知り合ったスペインの人達に、僕がかつて2年スペインに住んでいたよ、とスペイン語で言っても、十中八九、英語で返事が返ってくるという事。それにもめげず、更にスペイン語で話し続けても、英語が返ってくるのです。その上、妙に気取った態度、と言うか、寡黙な北ヨーロッパ人の風情をまとおうとする人も少なくない。あたかも、「僕は君が知っている一般スペイン人とは違うよ」とでも言いたげに。

また、かつてスペインで僕の友人だった人達、教育の高い人達でしたが、がアルモドバルの映画を事ある毎にけなすのです。「アルモドバルが描くスペイン人像は本当のスペイン人とは違う」、「私らあんなに血の気が多くて馬鹿っぽくない」、「海外で誤解を招くじゃないか」等々。

この一連の事象を僕なりに解釈すると、つまりスペイン人には劣等感があるからなのだ、と結論付けられてしまいます。スペインは1975年までフランコ軍政の独裁政権下にあったので、国が開かれて安定したのは比較的最近の事。民主化されてからECヨーロッパ共同体に加入する時、イギリスでは反対する声があったそうでもあります。そういう歴史がこの劣等感の源なのかな、と察する事が出来ますが、それならば、もっと自信を持てよ、と僕は強く提言したい。

所変わって、イギリス。この国の人々の場合、そういう部分はどうなのだろうか、と。答えは簡単です。根っからの皮肉屋の精神も相まって、この国の人々は他国人の低次元な批判などには全く動じない、と言うか、無反応です。

むしろ、自分達の滑稽なところ、妙なところを笑い飛ばして面白がる土壌がある程です。BBCで近年人気だったLittle Britain (自分達で自分達をコケにして呼ぶLittle Englander=島国根性で器の小さいイングランド人、という英語表現から来ていると思われます)というコメディー番組では、この国の変なところや人々を風刺して笑い飛ばします。例えばhttps://www.youtube.com/watch?v=1pw8m_NTJ_0 (これはアメリカに舞台を移して作られた番外編で、アメリカとイギリスの違いがまた別な趣で面白い。こういうレセプショニスト、本当にいるのです、イギリスには!)

イギリスのこういうところは、世界の先陣を切って世の中の近代化に乗り出し、世界初、というものが山ほどあり、文化、アート、科学の分野でも世界に誇れるものが掃いて捨てるほどある、という揺らぎない自負、自信、余裕から来ているように思います。ロンドンパラリンピックの開会セレモニーにホーキンス博士が使えるという、あのネタの豊富さがあるのです。

と、こう言いつつ、僕はイギリスのそういうところを諸手を挙げて礼賛している訳ではないので、誤解なきよう。確かに、どっしりとした大人の振る舞いにも見えるのですが、その一方で、その自負から来る傲慢な行動が他国に多大な不幸をもたらした例が沢山あるわけですし。例えば、隣国のアイルランドへの蛮行、等。

最後に、では日本はどうなのか、となる訳ですが、実際、どうなのでしょうか。それを僕が語るのは多少気が引けるところですが、一つだけ、外から日本を見ていて思う事はあります。つまり、アジアの先頭で近代化を切り拓いて来たという自負があるのであれば、もう少し、どっしりと構えて、度量の広さを示しても良いのではないか、という事。外からの目を気にするべきところと、そうではないところとが逆の場合が少なくないようにも。

マレーシアの首相が日本に「自信を持て」と言ったとか言わないとか。それは、こういう事を仰りたいのだ、と僕は思います。決して、愛国精神や国粋主義、などというものを説いているわけではないのだ、と。