ロンドン・マークス&スペンサー店員の日記

純生のイギリス人を語ります。

片想いの日本ファン達

ちょっと、ここでイギリスという国名の日本語表記について語っておこうと思います。と言うのも、イギリスというのは明らかにEnglish、つまりEnglandから来ていると思われるのですが、このEnglandというのは、かつての王国で、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドと共に現在の国、連合王国を構成しているに過ぎないからです。身近な例として、サッカーのワールドカップに出場するEnglandチームにはスコットランド人もウェールズ人も、そして北アイルランド人も入ることは出来ず、各々、独自のチームを結成しているという事実が挙げられるでしょう。


アメリカ人や近隣のヨーロッパ人でさえ、この国全体を指す言葉としてEnglandを使う間違いを犯します。それを思えば、遠い国日本でイギリスと呼ばれても仕方がないのかもしれませんが、長くここに住む僕としてはこの言葉を使う事に多少の後ろめたさを感じてしまいます。特に、かつてウェールズに住んだ事がありましたから、それを伝えるのに日本語だとイギリスのウェールズと言わざるを得ず、何ともトンチンカンな事になってしまいます。など、要らぬうんちくを語っておきながら、このブログでは便宜上、「グレートブリテン連合王国及び北部アイルランド」を指す言葉としてイギリスを使おうと思います。違和感を感じる方、お許しくださいませ。


さて、そのイギリスで最近僕が出会うイギリス人達の多くは、ごく普通の、労働者階級の人々です。つまり、今の職場の同僚という訳ですが、実はその中に思いの外たくさんの日本ファンが隠れています。というといかにも一般イギリス人の多数が日本に興味を持っているかのように響くかもしれませんが、それは違いますので、そこははっきりさせておきます。日本は、「極」東の国の一つ、オノヨーコの国です。


とは言え、かつては、日本に興味がある人というのは裕福で学も高めの人達がほとんどでした。しかし、最近はスーパーマーケットで働いているタイプの層にも熱烈的に、そして片想い的に日本を愛している人達がいるのです。


去年のクリスマスにSainsbury’sで働いた時、僕が日本人だと分かるとそれだけで感動し、毎日自分がどれだけ日本が好きなのか話してくれる同僚が三人いました。皆、この国の労働者階級どっぷりの若者達です。共通項は、アニメ。残念ながら僕は世代が上過ぎてその若者達が夢中の作品については全くの無知でしたが、彼らはとにかくアニメから学び取った日本語を沢山知っていて、僕を「様」付けで呼んでみたり、「弟!」と呼んでみたり、はたまた「好きー」と叫んだと思えば、「これで終わりだ」と言ってみせたり、等々。終いには休憩時間に日本のアニメを持ち込んで、テレビに接続して僕と一緒に見ては喜ぶものだから、休憩時間はゆっくりしたいわい、と思いつつ、謹んでお相手をする日々でした。アニメに興味が無い同僚達が「またCartoonなんか見て。。。」と小馬鹿にすると、「日本のアニメはカートゥーンじゃねえよ、奥が深いんだよ」と言い返す、そういう奴らでした。今働いているM&Sでも勿論(?)二名、既に日本訪問済みの大日本ファンがいて、これまた、仕事中に日本のお話を得意げに聞かせてくれます。


と、まあ、こうした現象は勿論嬉しいものなのですが、同時に僕としては少し申し訳ない気もしているのです。「片想い的に」と前述しましたが、そういう意味で、です。


もっと言えば、日本政府がロンドンで展開している日本文化紹介の対象が、インテリや裕福な層に絞っているケースが多いように思えるからです。最近ロンドンの富裕層地域KensingtonにオープンしたJapan House(https://www.japanhouselondon.uk/)なるものがその最たるものでしょうか。(Japan House訪問記は後日別途したためようと思います。)


勿論、それもあって然るべきですし、そうした日本ブランドを守るという趣旨も分かります。しかし、それだけでは、何とも寂しいと。そもそもそういった層には経済力があり、自力で自身の興味を追及できるでしょうし、既に良く知ってもいるでしょう。日本人との接点がある人も少なくはないはずです。


その一方で、今まで生の日本人、普通に目線が合った話ができる日本人と会う機会が皆無で、だからこんな僕でも出会って大はしゃぎするような日本ファン達もいます。そういう人達の気持ちをおざなりにしたままの日本の政府が残念なのです。尤も、気付いていないだけかもしれませんが、それもまた、勉強不足だと言わざるを得ないでしょう。


日本で開催されたサッカーのワールドカップ、皆さま憶えておいででしょうか。あの後日談としてこちらで聞かれたのは、「見ず知らずの日本のサッカーファン達と夜な夜な一緒に酔っ払って盛り上がった事、それがすごく楽しかった~!」という声。そういう事なんです。尤も、そういうナチュラルな交流に国がズカズカと足を踏み込んで欲しいとも思いませんが、少なくともそれを理解した上で日本を売り込んで頂けないものかと。そういう粋な国であって欲しいと、僕は願うのです。