ロンドン・マークス&スペンサー店員の日記

純生のイギリス人を語ります。

移民がマーケットに構えた1ペニー均一ショップ、それがマークス&スペンサーの始まり

さて、僕が今まで苦しくなるたびに寛大に受け入れ続けてきてくれたマークス&スペンサー(www.marksandspencer.com)、最近はM&Sという名称ブランドへと移行を進め、最近イギリスにやって来た人々にはMarks&Spencerと言っても通じなくなりつつあります。これは今まで売りにしてきた伝統の保守というイメージからの脱却を図る戦略の一つだと思われます。


では、M&Sの生い立ちはいかなるものかというと、時をさかのぼる事130年前、ポーランドからやって来たユダヤ系の移民マークスさんがイングランド北部Leedsのマーケットに構えた1ペニー均一価格の屋台店、それがその起源とされています。スペンサーさんはマークスさんの本格的なビジネス展開時に出資したパートナー。尚、今でもM&Sで働き始めると、最初に二日間かけて行われる入社オリエンテーション時にこの話が出てきます。曰く、なぜ1ペニー均一価格にしたかというと、当時英語が不自由だったマークスさんがお客さんとの値段交渉を避けたかったから、「全部1ペニーだから値段を尋ねてくれるな」と張り紙をしたところそれがウケた、と。


ところで、M&Sをスーパーと称しましたが、実は衣類や家庭用品、更には家具まで販売しています。基本的に全て自社ブランド商品。8年くらい前に食品部門でやっとコカ・コーラなどのブランドを置くようなりましたが、今でも95%自社ブランド品になっています。衣類に関しては今でもまだ全イギリスのマーケット占有率のトップのはずですが、近年はその立場が危うくなり、悩んでいる様子。僕的には社員割引20%があってもソックス以外はあまり買わないですね。今夏のサッカーワールドカップのイングランドチームが公式に着ていたスーツはM&S提供でしたが。


因みに僕が最初にM&Sで働いたのはロンドンのMarble Archにある旗艦店で、その後ロンドンきってのお上品地域にあるKensington店などを経験し、今は北ロンドンのお金持ち地域にある食品オンリー店で勤務中です。会社の起源に相応しく、というより、異質な者に寛大なイギリスらしく、同僚たちは世界中からこの地に辿り着いた人達。こんな僕と仲良くしてくれるのはポーランド系、ポルトガル系、イラン系、インド系、ガーナ系、そしてもちろん土着のこてこてイギリスおばちゃん!実はこのおばちゃん、怖いもの知らずで強烈なものだから、お客も同僚も敬遠しがちなのですが、僕は大好きなのです。おもてなし命の日本から来ると何とも爽快で!そしてもう一人、耳が聞こえず口頭の会話もできない中東系のお父さんも良くしてくれます。その話もしたいところですが、それはまた次の機会に、という事にしましょう。